アロハ!ハワイに戻ってきています。オリンピック日本ではたいへん盛り上がったみたいですね。僕は7月26日から8月24日まで国際映像でCG用のデータがきちんと画面にでるようにセットアップ、トラブルシュートする仕事で行ってきました。今回10回目、足掛け20年目のオリンピックです。
今回はチーム6人のチームリーダーとしてオリンピック公園すべての競技を担当し、CGマシン33台(中継車22台)のセットアップがありました。
担当競技はテニス、柔道、レスリング、バスケットボール、体操、新体操、水泳、シンクロ、飛び込み、水球、ハンドボール、ゴルフ、自転車、競歩、フェンシング、バスケットボール、テコンドーです。
こんなに競技を担当したのは初めてですし、ましてやこの仕事でチームリーダーなど任されたことはなかったのでとてもやりがいがありました。特に水泳は全世界で人気のスポーツなので失敗は許されません。事前のセットアップが全てなのでチェック項目をすべて網羅するよう気を使いました。
この仕事は最初の2週間が忙しさのピークです。その後は長い拘束時間との戦いです。今回のオリンピックは僕らのチームは合計36名。オリンピックごとに会場のレイアウトが違うので人数は増減しますが、夏の五輪の中でも今回は最多メンバーでした。その中で僕のチームはイギリス1、スペイン1、ポーランド2、ブラジル1と非常に多様なメンバーでした。
初日に一緒に回った後すぐに各会場に散らばり開会式までの一週間で上記のスポーツの殆どをセットアップします。この間組織委員会の技術スタッフとの調整作業が多く発生し、ここに国民性による働き方の違いを度々垣間見ることになります。開会式が終わり、オリンピック初日から僕らのスポーツはほぼすべてヨーイドンで開始なのでひどい時は朝5:00から夜の12:30までチームでサポートしなくてはなりません。実際のオペレーション(カメラ、機器操作、所謂プロダクション)はプロダクションチームが担当しているので我々技術は裏にいてトラブルがあった時に対応する仕事です。シフトを組むのですがどうしても最初は勤務時間が長くなり、今回僕の最長は一日16時間です。
チームは非常に良いメンバーに恵まれました。宿がほぼ全員一緒だったので初日から飲みニケーションで一気に距離が縮まりました(笑)。22歳から50歳まで新卒からベテランのいいミックスで良い友人となることができました。マイチームについたあだ名は「ドリンキングチーム」、飲みチームです。僕らは長い拘束時間のあとでへとへとでもブラジルのカクテル、カイピリーニャを求め夜な夜なUberを使い現地のバーを探してチームメンバーの親交を深めました。こんなに出歩いたのは20代以来だったのでかなりきつかったですw。
ブラジルって本当に面白い国でした。人々は陽気でとてもフレンドリー。英語を話す人が少ないのですが片言のスペイン語がかなり重宝しました。ポルトガル語はスペイン語と若干共通しているし、スペイン語の国に囲まれているので聞き慣れているようです。あと食事がとても美味しい!特に肉。有名なシュハスコはあまり行かなかったけど飲み屋で出てくる肉料理は本当に美味しかったです。ビーフ、チキン、豚問わず肉自体の味がいいというか、あれは放牧で自然な育て方でもしているんでしょうかね。とにかく最高でした。あとは豆料理です。とくに豆のスープは格別でした。片道28時間もかからなければ妻を是非つれて行ってあげたいです。メディアが煽っていたジカ熱や治安の悪さは全く無用の心配でした。
一方この国は思っていたより発展途上でした。トイレの紙は中国同様流すことはできません。もし自国にいるつもりで無意識に流してしまったら。。。という失敗談は我がチームにも数件ありました。オリンピック公園(仕事場)からメディア用に建てられた宿までシャトルバスで移動しますが一歩外に出ると道路の舗装はままならず、建築基準法の有無も疑うレベルの建物が多くあります。停電もありました。それも宿だけでなく地域一帯のレベルです。ホテルの水はうすーく濁っています。携帯電話はコールし始める前に5−10秒かかります。交通事故はよく見ました。バイクが我が物顔で渋滞中の車をすり抜けていきます。道路を横断する歩行者も本当に多いです。交通システムも見た印象ではあまり効率的ではなく、交差点が少ないので時折あるUターンスポットまで行き二倍の距離を行って半分戻るということも少なくありません。
ブラジル人の時間のルーズさはハワイの比ではありません。「あと4分で行く!」という返事は鵜呑みにしてはいけません。約10倍にして待っていないと気持ちがもちませんw。オリンピック一年前に完成するはずの自転車会場は開会一ヶ月前まで遅れたそうです。遅れても間に合わせたからいいだろというのが彼らのやり方らしいですがそこからケーブルの引き込みなどする通信会社他インフラ関係の会社にはたまったもんではないですよね。僕は会場で電話線一本修復してもらうのに7時間待ちました。でも同じ雰囲気だったアテネ、ソチ(ロシア)より人々がフレンドリーだったのが救いでした。聞くところによると美意識の高いブラジル人は先進国へのコンプレックスがあり、「先進国の仲間入り」をオリンピックでアピールしたいという思いがあるそうです。ただ「すぐにやるよ」とか「問題ないから」という言葉はある意味相手を喜ばせるためだけに使い実態は全く違うというケースを多く目にしました。
さて、今回は思っていたよりスムーズに終わった五輪というのが正直な印象です。問題がなかったわけではありません、テレビコンパウンドはありえない停電もあったし、ボランティアの出勤が日曜日急激に少なくなりセキュリティで長蛇の列になったし、皆さんの知るところでは飛び込みや水球会場の水の色問題などゴシップには事欠かない五輪でした。でもなんとなくすんなり進んでいて終わってみればブラジルは素晴らしい五輪をホストしたなと思います。
そんなリオ五輪をうまくまとめたBBCのビデオ、Imperfectly Perfect”です。
一ヶ月ハワイの家族のもとを離れていたわけですが、今まで以上に帰るところがある幸せを感じたオリンピックはありませんでした。同時に唯一無二の世界イベントで働ける喜びは今回少し減ってきたという現実もあります。いつまで呼ばれるかわかりませんが2020年の東京五輪が集大成になる予感がしてきています。老害になる前に次の世代の人に譲らなくてはいけないですね。
長旅から帰る場所がハワイというのは本当に幸せです。
庭でソファーに寝転びながら貿易風を感じてリハビリしています。
マハロ
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